日本を取り巻く環境は、混迷の度合を深めており、政府関係機関であれ、企業であれ、個人であれ、不確実性の高い海外で活動する場合、各分野における意思決定に際しては、情報収集と分析の重要性がより一層高まっております。私自身、政府系エネルギー企業や在外公館の一員として中東、アフリカ、アジアの現地で仕事をしていく中で、その思いを一層強くしました。
振り返れば、私自身、海外雄飛を伝統とする拓殖大学に通う頃から中東情勢とアラビア語を学び、日本と中東の架け橋になることを志してきました。この度、調査・研究とコンサルティングの提供に集中するために安定した会社員の立場を離れました。これは、より幅広く、日本社会の各層に様々な形で貢献すると同時に、海外との相互理解を深めたいとの思いからです。
2021年8月15日の米軍のアフガニスタンからの撤退とタリバンの20年ぶりの復権は、私の決断の背中を強く押した出来事の一つです。9・11後の国際社会は、その後の20年間で激変しました。これからの20年、中東、アフリカ、アジア地域やイスラム社会がどのように変化し、日本はどのように関与していくべきかは難しい課題です。複雑な情勢をしっかりと読み解くことができ、調査・分析とリスクマネージメントの分野で私なりに貢献できれば、この試みも成功だったと20年後に振り返る時がくるのかも知れません。そう思えるよう皆様と共にこれからの激動の20年を乗り越えていければと思います。
2022年1月吉日
室達 康宏