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チェチェン人義勇兵部隊

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻において、ウクライナ側を支援する義勇兵が注目される中、イスラム主義の武装闘争派に関連する動向も報じられている。

3月23日ウクライナ軍がツイッターアカウント(@ArmedForcesUkr)で掲載した動画には、「アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)」と叫びながらRPGでロシア軍を攻撃する部隊による戦闘の様子が映っている。ウクライナ軍による動画のキャプションから同部隊は、シェイフ・マンスール大隊(The Sheikh Mansur Battalion)とされる[Armed Forces Ukr(20220323)]。

シェイフ・マンスール大隊は、チェチェン人義勇兵などで構成される部隊で、ムスリム3大隊の内の一つであり、2014年のクリミア危機を契機に導入された義勇兵部隊(Ukrainian Volunteer Battalions)の枠組みで設置された。同大隊名は、ロシア帝国の侵攻に対して抵抗運動の指導者であるチェチェンの英雄とされるマンスール師(1732年~1794年)に由来する。同大隊(及び別のチェチェン人部隊)は、チェチェン人とウクライナ双方にとって共通の敵であるロシアをウクライナで撃退し、チェチェンの解放(独立)につなげる意図を持ち、2015年ウクライナ南東部ドンバス地域での内戦に参戦し、親ロシア派武装組織との戦闘に従事した[Arabic Post Net(202203023)]。

ムスリム・チェパロフ司令官

シェイフ・マンスール大隊のムスリム・チェパロフ(Muslim Cheberloevskiy)司令官は、チェチェンで20年間ロシア軍相手に戦った。前半は、2度のチェチェン紛争において独立を目指し、後半は地下のテロ組織メンバーとして戦った。チェチェンの地下組織は、モスクワ劇場占拠事件、ベスラン学校占拠事件やモスクワの地下鉄での自爆テロ攻撃を実行した。ムスリム司令官は、民間人への攻撃には同意せず、それらの攻撃の計画と実行には参加していないとしつつも、敵(ロシア)に同じ痛みを与える攻撃は理解できると述べた[The Guardian(20150724)]。同大隊は、イスラム主義の傾向があり、シリアでアサド政権に対峙する反体制派の一員として戦闘に従事したチェチェン人も含まれるとされる[VICE(20150811)]。ちなみに、2003年に米国務省は、モスクワ劇場占拠事件に関与したとしてチェチェンの3組織をTerrorist Exclusion Listに追加している[PBS(20030228]。国連も同年、同3組織を制裁対象に追加し、2010年に制裁理由として、同3組織によるモスクワ劇場占拠事件の実行、関与及びアルカイダやタリバンとの共闘関係を開示した[UNSC(20100907)]。

別のチェチェン人義勇兵部隊は、「ジョハル・ドダエフ大隊(Dzhokhar Dudayev Battalion)」とされる[Arabic Post Net(202203023]。ジョハル・ドダエフ大隊の司令官は、アダム・オスマイエフ(Adam Osmayev)。同人は、2012年2月ウクライナのオデッサでプーチン大統領暗殺未遂の疑いで逮捕された。追って暗殺未遂の容疑は取り下げられたが、非合法な爆発物の取り扱いやウクライナへの密入国の罪で2年9か月服役した後、2014年11月オデッサ裁判所は同人の釈放を命じた。[MoscowTimes(20141118)]。

2月26日、ロンドンに拠点を置くチェチェン分離独立派組織「チェチェン・イケチア共和国(亡命政府を名乗る)」のアフメド・カザエフ(元副首相)は、ヨーロッパに居住するチェチェン人は、義勇兵としてウクライナ入りする用意があり、義勇兵のウクライナへの派遣を可能とする軍事協定の締結をゼレンスキー大統領に呼びかけた[ChechenPress(20220226)」。なお、同派は、軍事協定の締結は、チェチェン人義勇兵がジュネーブ条約の保護を受けるために必要としている。同派のウエブサイトでは、3月10日付アフメド・カザエフ発ゼレンスキー宛レターも参照可能[ChechenPress(20220310)」。

ウクライナでの「ジハード」を主張するアラブ世界の動きについては、2月28日、汎アラブ「シャルキル・アウサト」紙は、イスラム主義運動を専門にする批評家でありアラビア語衛星放送「アル=アラビーヤ」の番組で司会も務めるマシャーリー・アッ=ザーイディによる「ウクライナでジハードなのか?」との題名の論評を掲載した。同論評では、2月26日のカザエフ元首相によるチェチェン人義勇兵をウクライナに派遣するための軍事協定締結の呼びかけをアルカイダやテロ・ジハード組織の思想を宣伝するツイッターアカウントが掲載した例を紹介し、ウクライナでのロシア軍相手の戦闘をジハードと主張するジハード主義者やその支持者のアカウント(例:クェートのジハード主義者@mubaark)が散見されるとした。同論評では、キリスト教徒の国同士の戦争でジハードが成立する要素はないとしつつも、ジハード主義組織がロシア軍の侵攻を組織拡大の機会として利用し、ジハードの大義を持ち出すことによって、無知な若者がジハード主義者に騙される危険性を指摘した。また、2022年2月3日付アイマン・ザワヒリが発出した「ウンマ(イスラム共同体)の利益に奉仕する限り、非イスラム教徒にジハード的支援を提供することは合法である」との見解を踏まえて、ジハード主義者の動きへの警戒を怠るべきではないと論評を結んだ[Aawsat(20220228」。

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