ロシアの侵攻を受けて立つウクライナの高官(4月10日付アレストビッチ大統領府長官顧問の発言)によると、ウクライナ東部(トンバス地方)を主戦場として、「今後、2週間が重大な戦い」とされている。
これに先立つ3月11日ロシアの国家安全保障会議でプーチン大統領は、「ドンバス地方の人々を助けるため戦いたい外交人義勇兵がいるのであれば支援すべき」と述べ、ショイグ国防大臣は、「中東から1万6千人の義勇兵がロシア軍と共に戦う準備が出来ている」と発言している。
この中東とは「シリア」を指しているとされ、シリアでの傭兵募集については汎アラブ主要紙である「シャルクルアウサト」と「クドゥスアラビー」が3月後半の同じ時期にドンバス投入を見据えたシリア人傭兵募集の動きを報じている。両紙の特派員が傭兵募集自体は確認しているとのこと。
シャルクルアウサト紙:傭兵募集の窓口は、親シリア政府派の武装組織幹部や民間軍事会社経由で行われ、リビアにシリア人傭兵を派遣した際と同様の手法。シリアやリビアでロシア軍のコントラクターとして戦闘に従事した経験者が優先される。シリア人傭兵は、フメイム空港(ラタキア市南東にあるロシア空軍基地)から国外に輸送され、現地でロシア軍が指示する任務に従事する。民間軍事会社「ハンター」傘下の「ダーイシュ・ハンター」と名乗るグループは、同グループのテレグラムのアカウントで23歳~50歳までのシリア人を対象にウクライナでロシア軍と共に戦う傭兵の募集を公開した。フメイム基地の幹部に近い関係筋によると、ロシアはウクライナ東部のドンバスにシリア人傭兵を送りこむことを想定し「ナチ狩り」大隊の結成を準備している。
クドゥスアラビー紙:3月17日及び18日「ダーイシュ・ハンター」の名で知られる民間軍事会社「ハンター」が傭兵募集を掲載した事実を確認した。なお、「ハンター」は、ロシアの民間軍事会社「ワグナー」のシリアでのフロント企業とされる。「ハンター」社の募集要項は、傭兵の募集と派遣候補者の選定は追って必要に応じて招集された時のためとしており、ウクライナ軍相手の戦闘のために戦場に派遣する意図だと思われる。
その後、ウクライナ東部へのシリア人傭兵の準備状況については、4月初旬「アル=フッラ局」が日本の大手紙などもニュースソースとして度々引用する英NGOの「シリア人権監視団」の報告を引用する形で派遣準備完了と報じており、ウクライナ東部での戦闘の行方と合わせてシリア人傭兵の動向も懸念される。
アル=フッラ局:数十名のロシア軍将校、シリア軍将校及び親アサド政権派武装勢力幹部の監督の下、複数に分けたグループに対する軍事訓練が終了した。3月中旬、シリアからウクライナにシリア軍25師団の偵察将校、武装勢力のエルサレム旅団(親シリア政権)、バアス旅団(親シリア政権)及び第5軍団(親ロシア派)の幹部が派遣された。シリアからの偵察隊は260名で数日間ウクライナに滞在した。偵察隊がシリアに帰国してから傭兵向けの集中的な訓練のペースが速くなった。ウクライナ東部の前線にシリア人傭兵の第一弾を投入する準備が完了している。後続グループの軍事訓練は継続しており、ウクライナで軍事作戦が継続する場合、ウクライナに順次複数回に分けて派遣されるシリア人傭兵の数は、2万2千人に達する。
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